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◆第2章 ジェンダーの社会的構築
★ジェンダーの社会的構築
☆社会構築主義
著者は社会構築主義に従い、「社会構築主義とは、社会的世界は、社会過程の所産であるので、その世界や人々には何らかの決まった、一定の特質はありえない 事物や人々を今ある通りにしている、それらの内部の本質は存在しないという立場から、社会的世界の考察を行う立場をいう。」(p28)と述べます。この社会構築主義とはまったくおかしな立場です。
人間は心を持ち、その心は次のような特質を持つ、知性・感性・意志という本質を有します。
「知性とは、世界の構造を努力により、できるだけ客観的、体系的、整合的に内面化したものである。これにより人間は世界の構造を理解し、世界の構造に適合した働きをすることができるようになる。
感性とは、自己にとってどういう価値(好き・嫌い、善・悪、快・不快等)を持つかの情報を内面化したものである。これにより、人間は世界に独自の意味付を行うことができる。人間が独自の価値観・価値の体系を持つことが可能になる。そして、価値が存在するのは人間が現存在であることによる。すなわち、人間は自身の構造―世界を持ち、その世界について意味付を行っていかなければ生きていけないからである。人間は意味のない空虚な真空を生きるには弱すぎる。
意志は、生きるということを支える力であり、人間の存在を可能にするものである。すなわち、人間が生存を欲し、ある価値を追求するのは、これが存在するからである。いわば生命を求める人間の本能である。」(拙著「新しい哲学の原理」より)
このような心に内面化され、構造化された知性・感性・意志に基づいて人間は行為を行うのです。このような本質があるからこそ、人間は主体的に、個性的にふるまうことができるのです。社会構築主義は事物や人々を成り立たせている本質を見ようとしないイデオロギーに過ぎないと言えるでしょう。
☆社会構築主義の立場から見た「パーソナリティ」
社会構築主義ではパーソナリティにも本質が無いという誤った立場をとることになります。確かに、他と物理的に截然と区別できるパーソナリティなるものは存在しませんが、知性・感性・意志の構造中には人格の特質を与えるものが構造化されており、パーソナリティの本質を与えるのです。パーソナリティに本質が存在しないというなら、どこから個性を有する主体的意思が発現するというのでしょうか。
★二つの言説分析
☆テキストを読む実践
私の立場ではテキストを読む実践によって社会関係が形成される他に、知性と感性も構築されていることとなります。
※著者の分析のまとめ図
A
B
立場 構造主義やポスト構造主義のフランス哲学の流れに基づくもの
言語行為理論・会話分析・エスノメソドロジーの影響下にあるもの 関心 アイデンティティ、個我、個人的及び社会的変化、権力関係
われわれの社会的世界において広く流布されている知の脱構築や系譜学
言説の遂行的性質、つまり人々がその談話や執筆によって行っていること、彼らが達成しようとしていること
言説の埋め込み
話し手や書き手が話したり書いたりする時に具体的に置かれていた状況から独立した言説、すなわち流布されて文化的に利用可能な資源となった言説
具体的で文脈化された言語の諸遂行話し手や書き手が行う具体的な文脈の中で話したり書いたりするふるまい(言説)
具体的な場面における社会的相互行為の組織化に関して発話あるいは(視線や体の向きなどの)ふるまいが持つ効果あるいは機能であり、またその発話によってその場において組織化される社会的相互行為がどのようなものかということ
効果 その言説に接する人々を異なる諸権利と義務の体系のもとにおく カテゴリーセットが適用され、社会的相互行為場面における成員の発言権や発話権、あるいは社会的行為の遂行などに影響を与える ジェンダーを構築するパフォーマンスの見いだされる場所
法・宗教・学問などにおける「広く流布している諸言説」 具体的な相互行為場面で行為を遂行することに関わる言説
照準する言説(最大の相違となる)
その言説が成立当初埋め込まれていた文脈から切り離された形で分析される
「諸言説-読み手」関係
場面に埋め込まれた言説
対面的相互行為場面精神分析の利用 積極的に利用 利用を拒否
★ジェンダーから性支配へ
☆ジェンダー概念再考
著者はジェンダーが多義的概念であるとして「第一に、社会的文化的に形成された男らしさ、女らしさなどの性別特徴、あるいは性別アイデンティティを含意する。第二に、社会通念の中に分けもたれた男らしさ女らしさなどの観念や知識を意味する。第三に、男女間の社会関係を権力関係という視点から把握する研究上の視点を意味する。」(p59)と述べます。第一の点については私の立場では社会的文化的に形成された男らしさ、女らしさなどの性別特徴、あるいは性別アイデンティティには男女の生物的差異に基づく基礎を認めます。第三の点はあらかじめ、ジェンダーによる社会分析の結果が権力関係として現れなければならないと規定するものであり、そのイデオロギー性は明らかです。
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