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性同一性障害の構造


性同一性障害は心の性別と体の性別が一致しない現象です。
その心の性別に関しては二つの面が区別されます。
「このうちEの心の性別については、私の考えによると、二つに区別されます。すなわち、生物的形質による性別(生物脳)と心理的構造による性別(心理脳)です。生物脳は誕生時の脳の性分化により決定され、脳の形態が男性と女性とでは異なるようになります。心理脳はそうして決定された生物脳がどのような構造特性を有するかによる区別です。考えることは脳神経を配線することです。生まれてからの考え方が男性的か女性的かにより脳の内部の構造が決まって行き、それが性別に応じた特性を示すということです。」
「ジェンダー秩序の本質」より)
ですから、心と脳の不一致については次の6種類が考えられます。
肉体 生物脳 心理脳
1. 女性 女性 男性
2. 女性 男性 女性
3. 女性 男性 男性
4. 男性 男性 女性
5. 男性 女性 男性
6. 男性 女性 女性


このうち、肉体が女性の場合を例にして考えます。
3.のケースは生物脳と心理脳が共に肉体の性と不一致であり、典型的な性同一性障害だと考えます。
2.のケースは可能だと考えます。生物脳が男性でも、心理的に女性的な価値体系を身につけることは可能だと考えます。男性の生物脳からは男性性の根拠が提供されますが、同時に肉体から女性性の根拠も提供されるからです。
この場合は心理的には自分を女性として受け入れているので、女性としてのアイデンティティーを確立できると考えます。しかるに、ジェンダーフリーの文化の中にいると、女性性に基づく心理的価値体系を獲得できずに、生物脳の性に一致するように心理脳が形成されて行き、3.のケースに行き着くことになるのです。
1.のケースは肉体と生物脳が一致しているのに心理脳が不一致ですが、こういうケースも起こりうると考えます。心の性は自分がその性を心理的に受け入れるかどうかということですので、心理脳が重要であり、その心理脳が肉体と不一致なので、このケースでも性同一性障害の苦しみが生じると考えられます。肉体も生物脳も女性なのですから、心理脳も女性に形成されるのが自然なのですが、文化や環境の力で女性性に基づく価値体系が形成されてしまうのです。そして、ジェンダーフリーの教育はその文化や環境の力となるのです。
「性同一性障害について」で指摘したことはこの心理脳の可塑性について述べたものです。心理脳はジェンダーフリーの文化の中では、肉体の性と不一致に形成される危険性が非常に高まるのです。

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